帆船模型は作るのにたくさんの時間を必要としますが、道具があれば楽に綺麗に作業ができます。


 ただ、初めて製作なさる方は、いきなりすべてを揃えようとしないほうがよいと思います。
まずは必要最小限のものからスタートし、必要になる都度、その必要性を理解し、どういう工具が便利かをよく検討して、買い足していくことをお勧めしています。また、工具は微妙に進化もしていきいますので、その方が理に適っています。

もう少し説明しますと、例えば切る作業を、カッターで始めたとします。カッターだと、先がデザインナイフほど鋭利ではありませんから、不便を感じると思います。またブレード部分はたわみやすく、力を入れるような作業は苦手だということに気がつくでしょう。そしてデザインナイフに変えた時には、安いものや用途の異なるものだと柄がプラスティックのものだったりして、剛性があり木材のような硬いものを切るときには不安を感じることもあるでしょう。

ところが他方、これらをどう思うかは、その方のセンスです。カッターで作り続けて、誰が見ても素晴らしい作品を作る人もいらっしゃいます。結局は、気持ちよく楽しく作り続けられるかが一番重要なのだと思います。


 切断する工具一つとっても、評価する視点を養い、それぞれ使い分ける能力を持つよう心掛けるべきだと思います。いろいろ使用してこそ、わかることがあるでしょう。

ナイフ

クラフトナイフ、デザインナイフと呼ばれる先の尖ったナイフが便利です。
 先が尖っていると細かい所にブレードが届くからです。また、ブレードの形にバラエティがあり彫刻刀のように使用できるような平刀のようなブレードもあります。
 柄が金属のものは剛性が高く、太いので力が入れ易くなっています。ブレードにはたわみも少ないことが多く、使いやすいので、 柄が金属のものがお勧めです。また、替え刃式なので、メンテナンスも不要です。

カッターマット

刃も机も傷めません。後片付けも楽です。
予算があれば、なるべく大きいサイズを購入すべきだと思います。

定規

物差しは、ステンレス製やアルミ製が便利です。長さを測るだけでなくカッターで切るときの当てにも使えます。
アルミはナイフを使っていると当然柔らかいので切れてしまい耐久性に欠けますが、竹やプラスチックのようなガラス質の定規でも、それは同じです。

三角定規も直角をとるために便利です。
曲尺はスコヤの代替にも使えます。

ピンバイス

木材や金属に非常に細い穴をあけるのに用います。

細いビットは非常に折れやすいので気をつけてください。
HSS鋼を採用しているものが標準です。

のこぎり

日本の大工道具である胴付き鋸などを用いると、ピッチの関係で切断面表面が荒かったり、鋸身が厚かったりしますので、そういうタイプのものでなく、具体的には歯のピッチが細かく、鋸身の薄いものを選ぶようにしてください。一般にはレザーソーとか、ピラニアンソーと呼ばれているものを選ばれる方がほとんどです。
 海外のものには左の写真のようにブレードが使い捨てできるようになっているレザーソーと呼ばれるものがあります。このタイプの多くは、差し込み部分にデザインナイフのブレードをいれるようにも設計されています。


マイターボックス

掃除で言えば、隅をきちんと掃いていると部屋全体はきれいに見えます。それと同じように工作物もエッジがきれいに処理されていると、加工が上手に見えることが多いものです。
 このジグを使うと、上から見て45度と90度と正確に切断できるだけでなく、横から見ても切断面が90度に切断できるので、鋸に慣れてない方には、便利な道具になると思います。
 また、写真では見えませんが、机の角に引っかけて固定するための「でっぱり」がついています。材料まで固定しやすく、力の弱い人にとっても切断しやすくなります。

ピンセット

細かいパーツの作業やロープを結ぶときなどに大活躍します。先の尖ったタイプや先の曲がったタイプがあります。初めて組み立てる方にとっては、想像するより遥かに使用箇所が多いので、非常に重要な工具だと後で気がつくことが多いです。

紙やすり

船体にやすりがけをするときは、紙やすりに長い「あて木」をあて、磨きます。
隅や奥まった箇所など届きにくい細部にサンディングしたい時は、小さい紙やすりを要らなくなった棒に貼り付けて使えば、そのような箇所にもサンディングが可能になります。(キットを初めてご購入いただいた際に同封している製作ガイドブックに詳細が掲載されています。)

以下のような使い分けが一般的かと思います。
●荒120まで…形を整える、例えば船体の形を整えるなど
●中180ー240…塗装前の素地調整などに使用
●細400、以上…重ね塗りの際、塗装膜のケバ取りのため必要。(この作業をしないと塗料が映えません。)
それぞれ、塗料によって使用頻度が変わります。

はんだごて

木材を曲げるにはいろいろな方法があります。熱曲げを行いたい場合は、通常、はんだごてかアイロンを使用することが多いようです。
熱曲げは応用範囲が広く、自然なカーブを得られることから、ベテランに使用者が多いようです。
普通のコテは設定温度が200度と高すぎるため、コテの先を自作する場合は、コテにパイプを採用するなどして、径の大きさを確保しつつ、放熱の工夫をして使用するのがいいと思います。このタイプのこて先を使用する場合は、放熱がたりないため、電力調整器※などを使用して温度を調整すると、いっそう便利に使えます。
(※電灯の明るさを調整するような調整器は1500円前後で市販されています。)
( ※ 一般にはんだごてには、ニクロム式とセラミック式があります。改造しやすいのは前者です。ニクロム式には、こての根元にネジがありますので、すぐにわかると思います。このネジを外して取り換えが可能なようになっています。)
 
 代用としてアイロンを使用なさる方もおられます。その形状と面積の広さから、B曲げ(板を、いわゆる曲げにくい方向へ板を曲げる曲げ方)には、はんだごてより便利ですが、
概して温度が低いため曲げに時間がかかることと、小さな曲げ加工にははんだごてのほうが向いていることから、やはり、はんだごてに軍配があがるように思います。

 なお海外では左の写真のような「はんだごて」がきちんと専用工具として販売されています。以前は日本でも販売されていましたが、PSEマークの普及とともに、あまり見られなくなっています。(申請が1件当たり30万円くらい、かかるようです。)
 アートフラワーという趣味のカテゴリーでは、似たようなはんだごてが、まだ販売されていますので、(PSEマークはついていないかもしれませんが)そちらを流用するといいかもしれません。

 

ストリップベンダー

木材を曲げる方法で、人気があるもうひとつの方法は、木材に溝をつける方法です。木製や竹のお弁当箱で角の部分に溝がつけてあるのを、誰でも一度はご覧になったことはないでしょうか。
この道具は、片側だけに金属片(刃はついていない)がついており、これで挟むと木材の片側にだけ溝がつくようになっています。
溝すべてを均等に入れることができないと、カーブが不自然になる恐れもあり、慣れが必要とされるようです。

クラフトばさみ

外板を切るときや、軽金属を切るときに、手軽に扱えて便利です。ニッパーでは板状のものは苦労するときがありますので、もっていて損はないと思います。

なお、ロープを切る時は裁縫で使用する糸切ばさみが便利です。


ロングノーズプライヤー

滑り止めがあるタイプは部品を傷つけてしまので、滑り止めのないものがオススメです。(特に真鍮板などの柔らかい軽金属をつかむ作業を行う場合、滑り止めの跡がつきますから気を付けて下さい。なお、柔らかい軽金属については、ラウンドノーズプライヤーと呼ばれる先端が円錐状の専門のプライヤーで扱います。上達してきたら追加で検討なさるのがよいと思います。)
 なお、金槌やハンマー類は、打ち損ねると船体に傷をつけてしまうため、基本工具から外しました。
 少なくとも金槌で打ち込む場合は、プラスチックハンマーや、一方の面が緩く湾曲している金槌(ホームセンターでは手に入らないと思います。)などのように、打ち損ねても致命傷にならないようなものを選ぶべきだと思います。

 安物のラジオペンチでも打ち込めることが多いです。ラジオペンチだと、金槌のように打ち損ねがありませんのでお勧めです。
 また、ネイリングツール、ピンプッシャーと呼ばれる工具も欧米ではよく見かけます。そちらも検討対象になると思います。どちらも、手の届かないようなところに釘を打てる道具として便利です。

ラウンドノーズプライヤー

こちらは、基本工具とまでは言えません。
ロングノーズプライヤーの説明で、このラウンドノーズプライヤーにも言及したのですが、ほとんど工具屋で見かけるたことがないので、写真で紹介させていただきました。

ポンチもしくは千枚通し

金属の板に穴をあける場合、ドリルをそのまま当てても滑って思い通りの位置に穴をあけられません。位置決めとして先に印をつけたりする道具をポンチと呼んだりします。
また、木工模型用で販売されるこの手の商品は、それだけでなく、小さな穴をわずかに広げるときなどにも用いたりして重宝します。