大砲について

初めて船に大砲が搭載されたのは14世紀の中頃といわれています。15世紀頃の資料には、すでに大砲を装備したものが多く見られるようになっています。
当時の初期の大砲は、鋳造技術が未熟なため我々がもつようなイメージの大砲ではなく、組立砲と呼ばれるものとその改良型である糸巻き型と呼ばれるものがあったそうです。

16世紀に鋳造砲が登場しはじめ、その飛距離・大型化・寿命 など、著しく発達しますが、それでも大砲は船体を破壊できるほど破壊力を持つものではなかったようです。
そして、それは、その後約2世紀の間、変ることはなかったと言われます。

船体を破壊できるほどの破壊力がないため、自然、その主目的は、マスト・索具などのぎ装の破壊による航海能力破壊と乗組員である人間の殺傷でした。そのため、殺傷を高めれるよう、あるいは艤装を破壊するような工夫が大砲の弾に施されていました。

たとえば、散弾のようなものであるとか、大きな玉をチェーンで接続したものであるとか、そのようなものが多種多様見られます。特にフランス軍は、オランダの提督が考案したというエンジェルという、2個の玉を鉄の鎖や棒でつないだ弾丸を、好んで用いたとされます。

大砲の種類

イギリス軍の砲手が一番熟達していたと言われます。そもそもスペインのアルマダが来襲した時、スペイン軍の大砲の射程距離をしのぐ、そして最新の4輪の大砲で迎え撃ったことは有名です。当時スペインの大砲は陸上で使用する2輪の大砲を船に乗せていたため、4輪のものより撃ちだせる回数が少なく、その点で著しく不利だったと言われています。
伝統としてか、大砲を重視していたのかもしれません。後述する船体を破壊することができるカロネード砲はイギリスで開発されています。

次の表は16世紀のイギリス軍の大砲の呼称です。
(なお、・・下記にあげた大砲が大砲の種類の全てではありません。また表示する重さは大砲の弾の重さです。)

キャノン50ポンド約22.7Kg
デミ・キャノン32ポンド約14.5kg
カルヴァリン17から18ポンド(約8kg前後)
デミ・カルヴァリン9から10ポンド(約4Kg超)
セイカー5ポンド約2.3kg
ミニオン4ポンド約1.8kg
ファルコン2.5から3ポンド(約0.6kg超)

以上の大砲の種類は、だいたい原理的には違いはなく、重さによる分類です。
船に搭載される大砲で、特殊な大砲としては次に紹介するようなものがあります。

カロネード砲

1744年イギリスのロバート・メルヴィル(英)が考案、スコットランドのカーロン社で製造された大砲、大きな破壊力をもつ割に軽量でかつ砲員3人で3分ごとに発射することが出来たそうです。ただし射程が非常に短いの欠点ですので、通常の大砲にとってかわることはありませんでした。
この大砲は接近して撃てば船体を破壊することが可能だと指摘する資料などもありました。そのせいかもしれませんが、この大砲の登場以後は大型船といえど、うっかり小型船に近づけないと言われていたようです。
軍艦は戦列艦構想の章で説明したように大砲の門数で分類したりもするのですが、カロネード砲はしばしば公式表示の門数に数えられなかったそうです。

イメージ的には中小型鑑に搭載されたり、戦列艦の船首周辺に数門だけ配置されるようなイメージがあります。

臼砲(モーター)

港湾施設や砦の攻略などに用いられる特殊な大砲です。弾の中に火薬を充填し、火縄でもって発射から着弾、爆発までの時間を調節できるようにした弾丸を打ち出すための大砲です。臼砲は短砲身で大口径であるため発射時の反動衝撃が大きく、船体も、それ専用に強化したボム・ケッチという特殊な船に搭載されていました。この臼砲の外形は上記の様々な大砲と、全然似ていません。

グラナド ビクトリーモデルキット

グラナード(ボムケッチ)

ビクトリーモデルから販売されているグラナードの写真です。なおこの船のキットはジョティカからも販売されています。

キャンデラリア (ボムケッチ)

1782年のジブラルタル大包囲戦に参加したスペイン船です。ジブラルタルは、イベリア半島の南東端に突き出した小さな半島でイギリスの地中海支配の要でした。アメリカの独立戦争の期間に、その無力化・奪取を狙いスペイン・フランスにより1779年から4年近くにわたり大包囲戦が行われました。1782年に最大の戦いとなっています。(なお、ジブラルタルは現在も英国の海外領です。日本人の感覚では、信じられない場所ですので、場所をご存じでない方は確認なさってみてください。「えっ」と思うような場所です。)